迷走録

言いたいことが長くなりそうになった時の落としどころ。

「”アカペラ”#あなたの街にハーモニーを」開演前BGM解説、のようなもの

ゴスペラーズの皆様、『ゴスペラーズ坂ツアー2021”アカペラ”#あなたの街へハーモニーを』の全公演終了、本当におめでとうございます。並びに携わった皆様本当にお疲れさまでした。

途中どうにも状況が厳しくなり完走できるかとても心配しておりましたが、なんとか全公演走りきることができて心から胸を撫で下ろしております。

 

 

と、挨拶はここまでにしてここから先は常体文で書こうと思う。

 

全公演が終了し今ツアーに関するネタバレが解禁されたわけだが。

公演本編に関しては多くの方々がいろいろと語ってくれるだろうし、8月にはWOWOWで放送が決定しているのでそこまで待ちたいという人もいることだろう。

そこで、恐らくその放送(と、きっとあると信じている円盤化)には入らないであろう

『開演前に会場で流れていたBGMの解説』みたいなものをネタバレとして形にしようかなと思った。

 

あくまで個人で調べたり記憶に頼りながら書くところも多いので、記憶違いや勘違いまた個人的な印象が多くなってしまうことをご容赦いただきたい。間違ったことが載っているとお気づきの方はそっとご助言いただけると大変ありがたい。

私より先に今ツアーに参加した際「開場したらなるべく早めに入場するといいよ」とアドバイスを残してくださった方々に感謝をしつつ。

ゴスペラーズメムバーによるアカペラフェイバリットソング~手洗いソングを添えて~】

 

一気に聴きたい方はこちらから↓

youtube.com

 

…とこのリンクを見て「え、なんでYouTubeなの?」と思われた方も多いだろう、私も出来ることならばApple MusicとかSpotifyとかで公開したかった。が、

一部アーティストの楽曲がサブスクリプションおよび配信リリースされていないのである…というわけで、しぶしぶYouTubeで楽曲リストを作成するに至った。山下達郎とっととサブスク解禁しませんかね

 

曲について解説する前に説明として。

通常のライブの場合客入れBGMは特に説明などがされるわけでもなく、開演までの間を埋めるためのまさにバックグラウンドでかかる音楽なのだが、今回のゴスペラーズのツアーライブにおいては

「ステージ装置の映像モニターにBGMの紹介を表示させ一巡を繰り返し流す」

というある種の演出が施されていた。これにより一巡する間に入場すればどのメンバーが誰のなんという曲を選んだのか一目でわかるようになっていた(そのおかげでこうして解説のようなものを書けている)。また、一定の時間になるとリーダー村上によるご挨拶とBGMの主旨についての説明が流れていた。

 

 

では1曲ずつ。

1.黒沢薫セレクト 山下達郎/ALONE

 アルバム『ON THE STREET CORNER 1』4曲目に収録 配信及びサブスクリプション無し

オリジナルアーティストはシェパード・シスターズ(The Shepherd Sisters)。アルバム通して言えることだが、山下氏の一人多重録音によるアカペラカバー曲である。

フルで聞いたことがなくともイントロ部分がテレビ番組などで効果音的に使われることが時々あったりするので、もしかしたら冒頭のシャンララ…というコーラスは聞いたことがあるという人もいるのではないだろうか。

ゴスマニにはお馴染みでほぼ説明不要、村上が高校3年のころ学園祭の後夜祭でアカペラをやろうと思い立ち、その時同クラスの黒沢を体育の授業中に呼び出してハモれるかどうかのテストをした楽曲であり、またその本番で村上・黒沢両名の人生で初めての喝采を浴びた思い出のある楽曲。

ちなみにこのアカペラアレンジのコーラスフレーズを、ほぼそのままの形でゴスペラーズカバー版の「やさしさに包まれたなら」で引用している(通称:シャンララアレンジ)。

手洗いソング「Doo-Wash」

 

と、ご本人が仰るように貴重なベースボーカルから始まる手洗いドゥーワップソング。画面左のコーラスが囀りのようでキュート。

 

2.北山陽一セレクト The Singers Unlimited/Both Sides Now

 アルバム『A Capella Ⅰ』1曲目に収録

Both Sides Now

Both Sides Now

  • ザ・シンガーズ・アンリミテッド
  • ジャズ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

初出はジュディ・コリンズ(Judy Collins)。その後作者であるジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)や多数のアーティストによってカバーされている楽曲。邦題「青春の光と影」。楽曲そのものはコマーシャルなどで使用されたことがあったので、耳にしたことがある人もいるかもしれない。

1コーラスを歌い終わった後のテンポ変更、からの転調に次ぐ転調に次ぐ転調(その間リードボーカルもチェンジしている)で高揚感と浮遊感を与えてくれるアレンジ。その分耳コピおよび再現の難易度は高いのではないだろうか。なおオリジナルや他のカバーに比べ3番にあたる部分を省略したアレンジとなっている。

The Singers Unlimitedは北山が愛聴するグループの一つで、たびたびツイートなどで言及している。彼がグループ外で不定期に行っている「きたごやま道場」(元々は北山とTRY-TONEの多胡淳氏によるユニット”kitago-yama”がアカペラ人有志で集って変態的(褒めてます)なハーモニーを奏でる会に変貌したもの)で練習課題として名前が挙がったこともある。

手洗いソング「パーミリオン」

 …これをあげたのがYouTubeでよかった、もしこれが某二コ動だったらタグもコメントもえらい事になっていたのではなかろうか。「人類には早すぎる動画」とか「公式が病気」とか「0:48」とか

画面さえ見なかったら普通にすごい多重録音アカペラなんだが…映像の情報量が…

なお会場で流れていたこの曲は何故か若干早回し状態になっていた。

 

3.酒井雄二セレクト The Real Group/Words

 アルバム『In The Middle Of Life』に収録(海外盤は3曲目、日本盤は10曲目)

Words

Words

  • ザ・リアル・グループ
  • ヴォーカル
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

スウェーデン発のジャズアカペラグループによる1曲。

流麗かつグルーヴィーなメロディに、サビあたりは数度聞いたら覚えられそうなほどシンプルでわかりやすい詞がついている。ライブで披露されている映像も探せば見ることができるのだが、その際音源に入っているボイスパーカッションパートを省略している。しかしそれでも楽曲そのもののグルーヴは残っていて実にクール。

ちなみにそのボイスパーカッション部分は、よくよく聞くと”tongue”,"sound","speak","voice"など”Words”=「言葉」に関する単語(=”Words”!)で構成されている。

 

…ついでにこれは蛇足だが、

 と北山が呟いていたりする。

 

手洗いソング「あらいさんとながせさん」

 ここ最近のゴスペラーズのアカペラではお馴染みとなったルーパーを使った一人アカペラ。音声が極端に左右に分かれているのは偶然なのだそう。画面右で歌う酒井の優しい表情にやられるゴスマニが多いとかなんとか。 

 

4.村上てつやセレクト 尾崎亜美/曇りのち晴れ

 アルバム『POINTS-2』1曲目に収録

曇りのち晴れ

曇りのち晴れ

  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

元々は志村香さんという(元)アイドルの方へ提供した楽曲を、作者である尾崎氏がセルフカバーしたもの。

彼女のみずみずしい歌声だけで構成された楽曲は聴いていると心を浄化されているような感覚になる。その声で青春の1ページを切り取ったような切ない歌詞を歌っているものだから、私は開演前なのに聴きながら泣きそうになってしまった(まだ彼らが歌ってすらいないのに・苦笑)。これ内容的にはハッピーエンド…なんです、よね…?

ここ最近ラジオなどに村上が出演した際この楽曲を数度紹介していた(のにもかかわらず気づけなかったのは自分がメディア露出を追えていなかったからである、ごめんねてっちゃん…)

www.leon.jp

https://www.tfm.co.jp/love/smartphone/index.php?catid=747&itemid=158432

 

手洗いソング「we can!」

 カリブ海の音楽スタイルのひとつ「カリプソ」をイメージして作られた曲。聴いていると一緒に身体を左右に揺らしたくなる。公開されてからこの曲の合いの手(?)「出来るよ!」がゴスマニの間で流行ったとかなんとか。

 

5.安岡優セレクト STARDUST☆REVUE/Charming

 アルバム『CHARMING』表題曲にして1曲目に収録

music.apple.com

高い音楽性と低い腰でおなじみのロックバンド、スターダスト☆レビューの初のアカペラアルバムに収録された1曲。リフレインされるサビやシンプルな歌詞でとても口ずさみやすいナンバー。

この曲を中学生のころ耳にした安岡少年は、アカペラ=人の声だけで構成された楽曲だとは意識せずに好きになっていたそう。

ゴスペラーズがアカペラの手本としたバンド、それこそがスターダスト☆レビューであることはそれぞれに公言している。その縁あってか数々のイベントでゴスとスタレビは共演している(最近であれば昨年の『音市音座2020』が記憶に新しいだろう)。2012年に行われた『WAVOCpresents東日本大震災ボランティア支援アカペラコンサート』にスタレビがゲスト出演(楽器を持たずアカペラだけでイベントに出るのはこれが初めてだったそう)した際、ゴスとこの曲でセッションした。

 

手洗いソング「1/100000」 

 「1/100」から始まる安岡の分数タイトルシリーズ(※筆者が勝手にそう思ってるだけです公式ではありません)の4つ目。60秒という短い時間の中で安岡節が炸裂している。とどめの囁きにやられるゴスマニが多数いたとかなんとか。

 

 

さて、一巡していた楽曲は上記までなのだが、開演15分前にこのループは終了する。その代わりに数曲違うものが流れていたのだがそれについても紹介する。なおここからの楽曲に関して舞台上のモニターには表示がされなかった。

 

6.The Four Freshmen/Their Hearts Were Full of Spring

アルバム『The Freshmen Year』ほか幾つかのベストアルバムに収録

オリジナル版の曲頭にある会話を省略したものは『The EP Collection』に収録

Their Hearts Were Full of Spring

Their Hearts Were Full of Spring

  • フォー・フレッシュメン
  • ジャズ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 1948年に結成されたアメリカのジャズボーカルカルテットによる1曲。山下達郎氏も

『ON THE STREET CORNER 3』にてほぼそのまま再現する形でカバーしている。

まるでおとぎ話を読んでいるかのような歌詞に深みと複雑さを備えたハーモニーが加えられている。

この楽曲も前述の「きたごやま道場」で度々練習曲として披露されることが多い。

 

(完全に余談であるのだがこの楽曲が流れるタイミングで場内アナウンスがかかっていたため、筆者は楽曲をうまく調べられず終演後の帰路でフォロワーさんに助言を戴いた。その節は本当にありがとうございました…)

 

7.14 Karat Soul/Stand By Me

アルバム『I Love You』『SUPER BEST OF 14 KARAT SOUL』収録 配信及びサブスクリプション無し

言わずと知れたベン・E・キングの代表曲をアカペラカバーしたナンバー。

耳にしたとき「あれっ」と思ったゴスマニの方も多いかもしれない、このアレンジは過去のライブで[なりきりゴスペラーズ]を同楽曲で行なった際のアレンジそのものである(またNHK『SONGS』に出演したとき集まった学生アカペラ人の方々と一緒に歌ったのもこのアレンジであった)。

そしてこの”14 KARAT SOULの「Stand By Me」”は、安岡が学生のころたまたま通りかかったSCSの新歓ライブで飛び入りして歌った(『アカペラ2』収録「マジックナンバー」の歌詩のもとになったエピソード)楽曲でもある。

 

8.Boyz Ⅱ Men/Thank You

 アルバム『Ⅱ』1曲目に収録

サンキュー

サンキュー

  • ボーイズⅡメン
  • ネオ・ソウル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 1994年の夏、つまりゴスペラーズのメジャーデビュー直前にリリースされた楽曲。アルバムのヒットを受け翌年にシングルカットもされている。

ゴスペラーズが打ち出しているアカペラスタイル”ケンカアカペラ”の元とも言えるような、ビートの効いたナンバー。ほぼこのまま再現したアレンジでゴスもカバーしている。

開演直前に流れていたため会場では1コーラス歌いきるあたりでフェードアウトしてしまうのだが、原曲をきちんと聴いたことがないゴスマニの方は是非最後まで聴いてみてほしい。最後のサビ前のスキャット部分に何度聴いても黒沢の声にしか聞こえないコーラスがあると気付くはず(もちろんオリジナルなので黒沢の声ではないのだが)。そしてゴス版の同楽曲を再度聴いて、再現度の高さとオリジナルとの違いを楽しんでみるのもまた一興。

 

 

以上8曲(手洗いソングを入れれば13曲)が開演前にかかっていたBGMの全てである。

ここからお気に入りの楽曲を見つけるもよし、推薦メムバーに思いを馳せるもよし、ツアーの思い出に浸るもよし、いずれにせよここまで目を通してくださった方にとってなにかしらお役に立てたなら幸いである。

私もまたこれらの楽曲たちと『アカペラ2』をリピートさせながら余韻に浸ろうと思う。この先のゴスペラーズ次の一手を待ちながら。